（東京中日スポーツ新聞　00.11.20掲載）

シンガー・ソングライターの来生たかお（５０）が、今年でデビュー25周年を迎え、記念アルバム「Ｄｅａｒ　ｍｙ　ｃｏｍｐａｎｙ」をリリースした。
　これまで、来生に縁のあるゲストを迎えた粋なアルバムに仕上がった。
その来生に25年の音楽人生を振り返ってもらい、今の音楽を語ってもらった。

　アルバムに参加している顔ぶれが、いかにも粋で揮っている。
　30年来の友人の井上陽水、忌野清志郎、永六輔、中森明菜、薬師丸ひろ子、大橋純子と、実に多彩なメンバーだ。
　「みなさん、時間のないところを快諾していただいて感謝してます。特に明菜さんが歌ってくれたのはうれしかった」
　来生が中森に楽曲提供してヒットした「セカンド・ラブ」を今回は来生とのデュエットで初めて録音している。
　「表現力や歌い方に説得力が増していて驚かされた。『夢の途中』を歌ってくれた（薬師丸）ひろ子さんは逆に天使のような若々しい歌声が変わらなくて、こちらもいいんですよ」と、ほくそえむ。
　80年代の怒涛のようなアイドル・ブーム時代、数多くの作曲を手がけ、ヒットを量産した来生だ。
　「たまたま、僕はその流れにはまったという感じでしたが、今はもうプロのライターが曲を作る時代ではなくなりつつありますから」
　現在では、作曲の依頼もかつてのような数ではなくなり、少し寂しげでもある。
　「でも、これほど日本の楽曲が音楽シーンで主流になるとは想像もしていなかった」と言う。
　Ｊ−ＰＯＰシーンの先駆けともいえた来生本人でも、和製ポップスの台頭は目を見張るばかりのようだ。
　洋楽を聞いて育った世代にとって「ビートルズを聴いたことのないミュージシャンの曲がヒットしているのは信じられないことで、時代を感じさせられる」のだ。
　「でも、今の音楽にはメロディーがなさすぎる。僕にとっての曲作りは、まずメロディー。どんなにサウンドを凝ったとしても、メロディーがよくなかったら、いい曲だとは感じられない」と、ズバリと言い切る。
　その目には、25年のキャリアからくる自信が満ちている。
　「才能の枯渇を感じたことはまだないですね。それを感じたらもうおしまい。やる気も起きないでしょうから」
　現在、ライブと曲作りを中心にマイペースな日々を送っている来生。
　昨年、井上陽水のすすめで運転免許を取得したという。
　「よくかみさんと温泉に出かけています。今までは助手席でしたけどね」と、テレ笑いする。
　「10年前には今世紀中は音楽を続けていきたい、と言ってきましたが、来年も何とかやってけそうなんで（笑い）、こうなったら30周年以上続けよう、そんな気持ちになっています」
　静かな闘志をみなぎらせていた。