【ママ下湧水・国分寺市】
（2000.7.16スポーツ報知掲載）

　湧水を求めて散策していると、心温まる気持ちになることが多い。今回の「ママ下湧水」は、そんな気分を味わえた貴重な隠れスポットだ。

　甲州街道の国立府中ＩＣの入り口交差点と、日野橋交差点間は、万年渋滞地帯としてドライバーにとって、うんざりする区間だが、意外にもそこから多摩川方向へ狭い道を入っていくと、急にのどかな田園風景が広がる。しかも、中央高速に沿うようにしてあるのだ。

　高速からは防音壁で周囲の景色を見ることができないし、まさか、高速に沿って青々と茂った水田があるなんて、地元の人以外は想像もできないだろう。しかも、辿り着くまで、かなり分かりづらい場所のため、今まで荒らされることも少なかった貴重なスポットだ。　「ママ下湧水」は、その水田の端、立ち入り禁止になっている雑木林の中から大量に湧き出ていた。

　すると、そこには小学生の女の子が二人、水路の中に入って水遊びをしているではないの。

　よく、遊びにくるの？　と尋ねると、「はい」と元気のいい返事。

　きれいな水だねと、言うと、「いつも、ここに来ると飲んでいるんです。冷たくておいしいですよ。国立の水道水は７割が地下水なので、水道の水も都内ではおいしいんです」

　そうなんだ。すると、その子たち慣れ手つきで湧水をすくってひと言。

　「あまーい！」

　す、すごい！　聞けば小４生。すでに水の甘味をききわけるとは恐れ入りました。なかなかの手足れと拝する。遅れをとるまいと、こちらも一口。

確かに、「あま〜い！」

雑味のない、高原の岩清水のような清冽さだ。

　「おじさん、クレソンもあるから食べてごらんよ」と、その子たちは清水の中に茂っている青々とした葉っぱをちぎって、差し出してくれた。

　「シャクッ」口の中で葉がはじけてクレソンのフルーティな香りがいっぱい広がり、間もなくピリッとした心地よい辛味が。紛れもなく天然のクレソンだ。

　「おいしい？」

　「とってもおいしいよ…」

　少女たちの、心のこもったおもてなしに、不覚にも目頭がつい熱くなってしまった。

「ああ、なんとステキな出会いなんだろう」

清らかな水は、少女たちの純粋で澄んだ心を育んでくれているに違いない。

　帰り際、少女たちはもうひとつあるという小さな湧水の場所を教えてくれた。

　二ヶ所の湧き出し口から静かに流れ出る泉。

　密かに『乙女たちの泉』と名付けさせてもらいました。

【湧き水の由来】

　昔から、崖下のことを地方名で「まま」と呼んでいたことから、ここの湧水を「マ
マ下湧水」と呼ぶようになった。一帯は豊富な湧水郡で、30年前まではワサビ田があ
った。

【近くの遊びスポット】

　少し距離はあるが、立川の昭和の記念公園や多摩動物園が車で30分圏内。帰りに
車の渋滞から抜けてひと休みするのも一興。

【ひと言アドバイス】

◆目的地までの道順は道幅も狭く入り組んでいるので、事故に要注意。◆駐車スペースは橋の傍らに狭いながら一ヶ所あり。◆ポリタンク可。◆24時間可。

【お薦め度】