鈴木慶江

　小澤征爾の「ニューイヤー・コンサート２００２」が大ヒットし、クラシックがお茶の間に急接近している中、庶民派の美人ソプラノ歌手、鈴木慶江(29)がＣＤデビューする。
　「気取らない普段着のクラシック」を目指す鈴木にデビユー直前の心境を聞いた。


　芸大卒業で写真のとおりの美人。まさに才色兼備のオペラ歌手だ。
　さぞや、お嬢様育ちかと訊ねると、
　「一般的なサラリーマンの家庭で、特別に裕福でもなければ、音楽の英才教育も受けていないんです」と意外な返答。
　小学校から剣道をやっていたとうから、どちらかといえば体育会系だ。
　その、鈴木の声帯の強さと美声にいち早く気づいたのが、高校時代の音楽の教師で、音大進学を強く両親に勧めたという。
　「それまで、歌は好きでしたけど、声楽という言葉すら知らない子でしたから（（笑））。今から思うと人生の転機でした」
　とはいえ、一般サラリーマンの家庭で芸大進学のために音楽の家庭教師をつけるのは大変なこと。
　「ですから、多くの人のご好意に支えられました」と言う。
　芸大の大学院へ進学する際も、昼間は音楽専門学校や塾の教師をしながら学費を稼ぎ、こつこつと声楽の勉学に励む日々が続いた。
　そんな鈴木に再度転機が訪れたのは、'99年にイタリアで行われた「イタリア声楽コンソルソ」で一位になってから。それからというもの、「国際声楽コンクール」オペラ部門最高位、Ｖ・ベッリーニ国際声楽コンクール最高位受賞と、軒並み有名コンクールで優勝し、イタリアのＧ・ニコリーニ国立音楽院へ推薦留学を手中にした。
　現在、イタリアのミラノに在住し日本とイタリア両国にまたがりコンサートと勉学で多忙な生活を送っている。
　そんな、鈴木がデビューＣＤ「Ｆｉｏｒｅ」では、山下達郎などが多用している声を多重録音するポップスの手法でモーツァルトを歌い、ハウスサウンドのアレンジで伸びやかなソプラノボイスを聴かせる。
　「今まで、クラシックに興味のなかった人にも私が掛け橋になれたら嬉しいです。そのことが私のライフワークだと思っています」と、大きな瞳を輝かせた。

◆プロフィル◆ 　鈴木慶江。神奈川県横須賀市生まれ。２９歳。東京芸術大学声楽科卒業。同大学院オペラ科修了。'９９年１１月イタリアへ渡り、「第２９回イタリアコンソルソ」第１位ミラノ大賞受賞。Ｇ・ニコリーニ国立音楽院に推薦留学。 ２００２年３月２０日デビューアルバム「Ｆｉｏｒｅ」をリリースする。

◆こぼれ話し◆ 　とにかく、話が気さくで海外生活を送っている感じがしない。どちらかといえば、下町のちゃきちゃきお姉さんというイメージの女性。このような人が、これからのクラシックを身近なものにしていってくれるのかなぁ、と期待しています。小澤征爾のＣＤも異例のヒットを飛ばしていますし、楽しみな歌手のデビューです。