【等々力不動尊・世田谷区】（2000.7.13 ポーツ報知掲載）

　たまには、一人歩きではなく友人でも誘おうかと、某レコード会社のＡ氏を湧水めぐりに誘ってみた。

　勤務中にもかかわらず、彼は「今日は夕方まで暇だからいいよ」とふたつ返事でＯＫ。そこで等々力不動尊周辺の湧水地帯へドライブすることにした。レコード会社というのは、意外に暇なのか？

　車中、そのＡ氏は唐突に「今さ、30万円あったら何を買いたい？」と聞くのである。答えに迷っていると彼は、自分だったら日本にはまだ数台しか輸入されていない、五分の一スケールのガソリンエンジン付きリモコン自動車を買いたいと言うのである。最高速は時速40ｋｍ以上にもなるそうだ。それが本当ならオモチャの域を越えている。

　そんな、話をしながら等々力不動尊の駐車場に着いた。参拝者無料というのがうれしいね。

　本殿の横から長い階段を降っていくと、そこはうっそうとした等々力渓谷の入り口だ。大都会の中に、まるで軽井沢のような景色が広がる。階段を降り切ると、目の前には小川が横たわり、その右手には二対の不動の滝が崖から流れ落ち、荘厳な佇まいをみせていた。

　「へえー、何かウソみたい所だね」と、Ａ氏はすっかり狐につままれたような様子だ。

　その崖のあちらこちらからも湧水の滴りが流れ落ち涼しげだ。

　そこで、傍らにある茶店で葛餅とお茶でひと休み。何か、のんびりとした平日の午後である。

　その茶店の女将に話を聞くと、「ここから橋を渡った奥に水を汲む場所がありますよ。土日にはいつも行列ができてますから」と教えてくれた。

　言われるままに行くと、ありましたよ。しかも二ヶ所の水汲み場が。竹の切り口からそれぞれチョロ
チョロと湧き水が流れていた。

　水量は少なめだが、冷たく癖のない清冽な味だ。ミネラル分もバランスよく含んでいて、お茶や料理に使うと抜群の引き立て役になるだろう。

　Ａ氏も「こりゃ美味い」と、感心することしきりだった。すっかりここが気に入った様子で、少し小川沿いの遊歩道を歩くことにした。多少川の匂いが気になったが、それ以外は文句なしのロケーションだ。そんな話をしながら、環八を真上に望む橋下から階段を上ると、お洒落なイタリアン・レストランがあったので、遅いランチをここで、獲ることにした。

　イカスミのパスタを食って、デザートにコーヒー。窓からは軽井沢のような風景。

　「なんで、女とこなかったんだろう」とぼそっとＡ氏。その言葉、そっくりかえしてやるわい。

【湧き水の由来】

　等々力渓谷の中程にあり、湧水は等々力不動尊の境内にも引かれて手水舎に利用されている。都の水質検査では例年良好。

【近くの遊びスポット】

　等々力渓谷には遊歩道が整備されていて、ちょっとしたハイキング気分を味わえる。不動の滝では、今でも早朝には滝に打たれる不動信者の姿を見ることができる。

　渓谷の上を通る環八通りの橋の傍らにイタリアン・レストラン「ＯＴＴＯ」がある。�рO３（３７４０）３７７８。年中無休。ランチは午後５時まで。

【ひと言アドバイス】

　渓谷へ降りると帰りの上り階段がかなり苦しい。ポリタンクより、ペットボトル程度が適量か。

【お薦め度】