ＴＯＫＩＥ





　注目のアーティストがひしめくＪ−ＰＯＰシーンで、いま異色の美人ベーシスト、Ｔｏｋｉｅ（トキエ）が引っ張りだこの人気だ。
　アップライトからエレキまで屈強な男でも難儀するベースという楽器を自在に操る実力派に、ベースの魅力と苦心を聞いた。



　Ｔｏｋｉｅが一躍脚光を浴びたのは、２０００年１１月ＵＡとブランキー・ジェット・シティーのベンジーが中心になり結成したユニットＡＪＩＣＯ（アジコ）に参加してから。現在（２００１年３月現在）、最新作「深緑」がヒット中だ。
　並行して人気ギタリスト、ＣＨＡＲの愛息ジェシーが結成し２０００年８月にメジャーデビューしたＲＩＺＥ（ライズ）のメンバーに参加、さらにｈｉｔｏｍｉのライブではサポートメンバーとしても活躍中という超過密スケジュールをこなす売れっ子だ。
　一見してモデルに見間違えるほどのルックス。が、ひとたびステージに上がるとスリムなボディーから、男顔負けのパワフルな演奏が炸裂する。ライブ会場では、Ｔｏｋｉｅ目当ての女性ファンも多く、彼女の演奏に黄色い歓声が飛ぶ。
　「嬉しかったのは、先日聞いていたラジオ番組のアンケートで、十代が演奏したい楽器の一位にベースがランクされたこと」と喜びをみせる。
　これまで日陰の存在だったベースにスポットを照らしたいちばんの立役者だ。
　「最近いちばん感動したのは、ドリフターズのいかりや長介さんが、テレビＣＭでアップライトのベースを渋く弾いているのを見たこと」と、ベースへの愛着はこの上なく深い。
　「でも、ベースという楽器は非力な女性にとってかなり身体的に負担が大きいんです。一時は腱鞘炎や首や背中を痛めて仕事ができなかったこともあって、それから筋トレは欠かせませんね」と、人には見せない努力と苦労も多い。
　中学校の入学歓迎会で見たブラスバンドに心酔し、それで始めた楽器が、たまたまベースだったという。以来、ベース一筋の人生。
　「私って、常に自然体。それが長続きしてきた理由かも。気合の入っていた女の子ほどやめてしまった。演奏する音楽によってベースという楽器はアップライトであれエレキであれ、変化できる。そこが、この楽器の最大の魅力ですね」
　これからのベース人生、いったい何足のワラジを履くのか、楽しみな女性だ。

（2001年3月19日、東京中日スポーツ新聞掲載）

◆プロフィル◆ 　Ｔｏｋｉｅ。７月１日東京都生まれ。中学時代からブラスバンド部でコントラバスを始め、高校時代からエレキベースも演奏し、ロックバンドを結成。高校卒業後はアマチュア・バンドとして活動。ニューヨークで二年弱「サルファー」のメンバーとして活動。帰国後96年から99年まで富樫春生の「ｂｏｍ‘ｂｏｃｏ」に在籍。97年「ＲＩＺＥ」を結成。２０００年８月２３日にからマキシシングル「カミナリ」（ソニーミュージック）でデビュー。同11月22日ＡＪＩＣＯのデビュー曲「波動」をリリース。２００１年２月７日、アルバム「深緑」リリース。

◆こぼれ話◆ 　ニューヨークでの音楽活動の体験が、帰国後、本人が意識する以前に周囲から「変わった」と言われるほど大きな収穫になったようだ。いい意味でアメリカナイズされたプロフェッショナルなミュージシャンへ飛躍した原動力になったといえる。音楽に対して「ストライクゾーンが広いんです」と語る彼女。パンクからジャズ、クラシックまで、音楽を広く楽しめる人である。その姿勢が彼女が演奏するベースの魅力そのものになっている気がする。これから、どんな活動を続けてくれるのか楽しみなベーシスト。ビジュアル的にも文句なしの美形です。