養老渓谷

　今回は、東京湾アクアラインの開通で、ぐんと近くなった千葉へ。最近まで千葉の秘境といわれ、日帰りは困難な観光名所と言われてきた「養老渓谷」の滝巡りハイキングを紹介しよう。
　地元の山野草を手土産に、新設の日帰り温泉で汗を流し、江戸前の穴子てんぷらで仕上げ。山の幸と海の幸を同時にたらふく味わえて満腹の旅だった。

　　それにしても、アクアラインの開通で千葉が近くなった。昔であれば、都内から木更津への旅は半日覚悟の旅程だったが、いまでは川崎浮島ジャンクションから海底トンネルで15分足らず。あっという間に東京湾を横断して木更津へ到着してしまう。おまけに現在千葉県内で本格導入されているＥＴＣを車載していれば、料金所はノンストップ。まるで夢のような未来型ドライブだ。
　今回の目的地は、養老渓谷にある水月寺を目指す。水月寺入り口からさらに五〇㍍ほど先の右側に町営の駐車場があり、一日三百円で駐車可能。ここがスタート地点になる。
　【スタート】車道を今きた進行方向に向かって歩き出す。道が途中狭くなっているので、往来の車には注意が必要。この日は小雨のぱらつく、あいにくの空模様だったが、晴れていれば右手下方に原生林の養老渓谷が一望できる。まさに深山幽谷の趣だ。
　【20分】長屋門風の古風な入り口へ到着。ここから階段で降りると真正面に高低差30㍍という勇壮な「養老の滝（粟又の滝）」が現れる。滝壷周辺は広場になっていて、絶好の記念写真スポット。ここでランチというのもいいだろう。10分ほど滝を眺めていた。
　【50分】遊歩道を下流に進むと、左手から「千代の滝」の細い流れ込みが。
　【55分】さらに進むと今度は比較的大きな「万代滝」の流れが左手から現れた。周囲はＶ字型の渓谷で新緑が雨露に輝いてまぶしい。所々に藤の花が咲き乱れ、養老川にはハヤやアユが群れて沢ガニもヒョコヒョコと現れる。驚いたことに、サンショウウオの姿も発見！　水のきれいな証拠だ。穏やかな流れで、しかもこの清流だったら、子供の川遊びも安心。生きた理科教材に満ち溢れている。
　【70分】「子宝のもみじ」の大木が現れた。秋ともなると、周辺は真っ赤な紅葉で彩られる名所だ。
　【80分】右手に切り立った断崖が現れ渓流の様相が一変。その崖から「昇竜の滝」が一筋流れ落ちている。
　【90分】左手に菖蒲のような「シャグ」の可憐な白い花が群生している。
　【100分】遊歩道の行き止まり手前に飛び石があり、そこを渡って階段を登る。
　ウグイスのほかに「ツー、ツー、ピー」と鳴くヤマガラや「デデッ、ポーポー」と鳴くキジバトの声が響き渡る。
　【110分】階段を登りしばらく進むと、左手に無料の「幻の滝休憩所」がある。ここの展望台から遥か下方に幻の滝を望める。足のすくむ絶景だ。ここは、滝に魅せられた小林進（58）さんが資材を投じて開拓し昭和61年から開業している場所。当時の思い出話を聞くのも一興だ。
　【120分】禅宗の古刹「水月寺」に到着。ここから駐車場まで徒歩で５分。

　【温泉ガイド】
　養老渓谷周辺にも温泉はあるが、帰りの温泉でお薦めは、昨年３月オープンしたばかりの「湯の郷かずさ」。アクアラインの手前、木更津南ＩＣから車で約５分という距離。ここは、久留里の名水に匹敵する井戸水を沸かした鉱泉で、露天風呂、砂風呂、サウナ、備長炭風呂など10種類のお風呂を楽しめる。飲料水がうまい。
　【営業案内】
　午前10時～夜12時（土日祝日は朝９時）。大人７００円（土日祝日１０００円）子供３５０円（５００円）。砂風呂７００円。※タオルは無料。
　木更津市潮見５‐７‐１。℡０４３８（３０）２３４５。

　【アクセスガイド】
　電車＆バス＝ＪＲ五井駅～養老渓谷駅（小湊鉄道）～水月寺（小湊バス）※日曜祝日のみ運行。（五井から１時間40分）
　車＝アクアライン～木更津北ＩＣ（館山自動車道）～国道４０９号～久留里街道～県道１６０号～県道３２号～清澄養老ライン～水月寺（川崎浮島から約１時間30分）　ガイドマップへ

　【美味ガイド】
　「幻の滝休憩所」の薬草てんぷらそば（７００円）。ユキノシタ、ドクダミ、ヤマウドなど野草のてんぷらが野趣に富んでいる。ほかにヨモギもち（４００円）も名物。
　温泉では、江戸前の穴子天重御膳（１２８０円）、牛しゃぶしゃぶ食べ放題（90分）大人２５００円、子供２０００円がお薦め。山海の美味を味わえる。
　【お土産】
　幻の瀧休憩所で販売されている一束２００円の天然のセリやミツバ。帰ってセリご飯にして食した。

　【一言アドバイス】
　アクセスは車が便利。ただし土日祝日は駐車スペースに限りがあるので、早めの現地到着が無難。また、道順が複雑なので、ナビがなければ下調べを慎重に。